【依存症 Vol.2】 自分を調節するということ

前回、薬物を一度使用したからといってすぐ依存症に至る訳ではない、というお話をしました。

では、薬で脳がおかしくなって依存症になるわけじゃないのだとすると、なぜ依存症になる人は使い続けるのでしょうか。

自己調節障害

その要因として、自己調節障害に対して、自己治療的な使用があります。

では、自己調節障害とは なんでしょうか。

自分を調節するということを 3つの点から説明します。

まずは、感情の調節です。

はしゃぎすぎたり落ち込みすぎたりしないよう、喜怒哀楽をコントロールする能力です。
人は、怒りや悲しみを 友達に愚痴る、家族と一緒に泣く など、感情を人と分かち合ってコントロールします。
ところが、依存症になる人は、強烈な対人不信から、人と分かち合って感情を調節することが難しいため、一人で対処できる方法として、薬物を使用し、一時的に感情のコントロールをはかります。
そうした対処を繰り返すことで、習慣的な使用になっていくのです。

次に、安全で健康的な生活を送る能力、つまり 身の回りの危険や 健康に悪いことを 避ける力です。

依存症に至る人の多くが、自分も調子が悪いのに他人の看病したり、夜の仕事で 自分を傷つけるような 働き方をしてしまったりなど、自らの健康や安全を 優先することができません。
その結果、気分や感情が安定せず、薬物使用に至る悪循環になります。

次に自分の生きる目的を持つ力です。

自分で自分を褒めたり、叱ったり、落ち込んだり、勇気を振り絞ったりしながら、自分独自の価値観や理想像を作っていく力です。

これが不足すると、自分の生きる価値が見いだせないことなどで、気分の落ち込みがおきます。
そうした沈んだ気持ちを上げるために薬物を使用する方もいます。

それでは自分を調節する能力は、どうやって身に付くのでしょうか。

これは小さい頃より周りの大人に感情や行動を調節してもらうことで大人の真似をしながら徐々に自分自身で調節ができるようになっていくのです。

例えば怒ったり泣いたりすれば、なだめてもらう。
元気がなくなれば、励ましてもらう。
危ないことをすれば、何が危険か安全かを教えてもらう。
いたずらをすれば、叱ってもらう。
良いことをすれば、褒めてもらう。

こうした日常のやりとりを、長年をかけて積み重ねていくことで、自分を調節する能力を身に付けていきます。

Dr.Kay
今回はここまで。

次回は 自己調節障害の続き、
薬物乱用の危険の高い子供の条件などについてお話しします。

つづきはこちら
→【依存症 Vol.3】 薬物乱用の危険の高い子供の条件とは

前回のお話はこちら
→【依存症 Vol.1】 こわい?関係ない?- なぜ依存症になるのか

▼ 動画で話を聞きたい人はこちらからどうぞ
 【依存症 Vol1~4】の内容を、10分ほどでまとめています。

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